MESSAGE-2
エリアマネジメント編
住人と街がつながる。
暮らし起点の
“街のデザイン”を語ろう
制作:NewsPicks Brand Design
執筆:田中瑠子 / 写真:岡村大輔 /
デザイン:Seisakujo inc.、月森恭助 /
編集:樫本倫子
本記事は、NewsPicks タイアップ記事
(2022/3/30掲載)の転載です。
地方が危ないと地方創生がうたわれて久しいが、「都心=問題がない」わけではない。都心居住の隆盛から30年ほど経ち、都市部の暮らしも大きな変革期を迎えている。
少子高齢化、災害、防犯、環境問題……街には課題が山積みだ。住人の価値観も多様化し、街づくり・再開発の観点からも、建物をつくるという「ハード」だけではなく、そこに集う人々を起点としたコミュニティベースの考え方が求められている。
ウェルビーイングな暮らしが叶う街・住まいとはいったいどんな姿なのか。その実現に立ちはだかる課題は。
「社会課題を、暮らし心地に変えていく」を行動指針に掲げる東急不動産の再開発事業本部長・宇杉真一郎氏と建築家・藤村龍至氏が対談。サステナブルな社会を実現する“街のデザインの方法”を語り合う。
ウェルビーイングな
暮らしを実現する再開発とは
──今、都市の再開発はどんな状況にあるのでしょうか。お二人の目線からお聞かせいただけますか。
宇杉
環境とともに、街とともに──。2021年、東急不動産は「GROUP VISION 2030」を定め、「WE ARE GREEN」をスローガンとして掲げています。
「誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来」のために、私たちにできることは何か。
このスローガンには、さまざまな思いが込められていますが、そのひとつにウェルビーイングな街と暮らしをつくることで、日本全体をより良くすることに貢献したい、という思いがあります。
そのなかで、我々が今取り組んでいる住宅起点のエリアマネジメントや、地域・街、環境への貢献という視点に立つと、正直、挑戦はまだまだこれからです。

都心の大規模再開発事業は、主にオフィス中心で進んできました。デベロッパー視点では、オフィスや商業施設を持つことで継続的に資産を保有でき、高い収益性が見込める。そのエリア全体の開発に関わることが、結果的にオフィス賃料や商業収入に跳ね返ってくるので、オフィスを中心とした街づくりは経済合理性が高く、進めやすかったのです。一方で、再開発の案件数としては、圧倒的にマンションのような住宅起点のものが多いのが実情です。
とくに東京の都市部から離れてくると、住宅を中心とした開発がほとんどになる。
住宅開発においても、エリアマネジメントあるいは開発にともなって地域や街、環境にどれだけ貢献できるかが、日本全体をより住みやすい場所に進化させていくためのキーポイントになると考えています。
藤村
東日本大震災の直後から、再度、マンションコミュニティが業界全体で注目されていますよね。
たとえば、そのルーツでもある、1977年に入居を開始した東京・板橋区の大規模集合住宅サンシティを訪ねたことがあります。
ここでは敷地内の緑を住民たちが植樹し、長い時間をかけて豊かな森をつくってきました。その環境下でサークル活動が盛んになり、築45年の今も人気物件です。

大規模マンションではホテルライクなサービスやプライバシーを重視した構造のアピールが際立った時期もありましたが、近年は改めてコミュニティ形成に意識が向いている印象があります。
住宅起点で街の魅力を
“再開発”する
宇杉
マンションが置かれた環境も、コミュニティ形成やその先にあるエリアマネジメントの成立に大きく影響していると見ています。
郊外の再開発では、駅前でも「タワーマンション+商業施設」というスタイルが多く、その商業施設の収益性を上げるためエリアマネジメントに注力し、それが結果的に住民にとってもプラスに働くケースも多い。
我々の取り組みのなかでは、「ブランズタワー大船」が、その事例と言えるでしょう。

駅至近の約1万7000㎡の大規模な敷地に、住宅・商業一体の大規模複合施設が誕生。商業施設、バスターミナル機能を集約させる駅前広場、公園、自転車駐輪場などが再整備され、多彩な都市機能が集積した新しい街に生まれ変わった。



再開発によって、老朽化した施設、電気・ガス・通信、交通などの各種インフラといった街の機能を更新し、より安心・安全な街に生まれ変わらせる。
地域住民の方が、日常的にも特別なときにも足を運べる、人の出入りが絶えない商業施設をつくることで、経済効果を生む。
さらに、住宅施設に新たな居住者が増えることで、新しいにぎわいの創出、自治体の税収増加につなげることができるのです。
藤村
2002年に「都市再生特別措置法」が定められたことをきっかけに再開発が活性化し、「エリアの価値」が盛んに議論されるようになりましたよね。
「渋谷は生活・住宅のある街」「日本橋は歴史」「京橋はものづくり」など、それぞれのエリアの特性を考えて街づくりを考えるようになった。
一見すると同じパッケージの大型マンションやショッピングモールでも、エリアの特徴と掛け合わせていくと違いが出てくる。
この流れはおもしろいなと思っています。
宇杉
おっしゃるとおり、エリアの特性をどう活かすのかは非常に重要なポイントですね。
水辺に立つ「ブランズタワー豊洲」では、立地を活かしたエリアマネジメントを行っていく予定です。
建物を高層化することで空地を多く設け、その場所を緑豊かで、かつ水際空間の街を体現する魅力的なオープンスペースに仕立てたのが本物件の特徴です。
このオープンスペースを活用したイベントなどを通して、コミュニティ形成を行い、多様な人々が積極的に水辺を楽しみ、交流を育んでいただける状況を生み出していきたい。マンションの入居者だけでなく、誘致した保育園や近隣の小学校、地域の町会、大学、NPO団体など、既存の活動団体とも連携をはかっていく予定です。
住民と街がつながる
コミュニティをどう生み出すか
藤村
開発から40〜50年を経た東京郊外の住宅開発を見ていると、コミュニティのディベロップメントがうまくいったところとそうではないところの地価の差、住民のみなさんの幸福度の違いに驚かされます。
たとえば、都心からの距離がほとんど同じでまったく同じ時期に分譲され、同じ規模のニュータウン同士でも、短期で分譲を終えたところと、バブル崩壊などの理由から30年かけて分譲したところでは、住民の年齢構成が異なる。
後者は世代バランスが取れていて、幅広い年齢層が入っているのでコミュニティ活動が生まれやすく街の雰囲気もまったく異なります。


宇杉
これまでの住民主導のコミュニティ形成は、リーダーシップのある方が周りを巻き込みながら動くことで実現できている側面も多分にありました。
マンション販売後の声としてよくあるのが、入居したお客様が個人で地域と積極的な関わりを持つことのハードルが高いという意見です。
お子さんがいるなど地域とのつながりをつくりやすい世帯もあれば、そうでない家族構成や年代の方も存在します。
そんな方の声にも応えるのが、当社の目指すエリアマネジメントやコミュニティ形成のあり方です。
先に挙げた「ブランズタワー大船」では、マンションの住民の方とともに街の環境美化活動を行いました。
地域との一体感が醸成できたと大変好評だったので、このような活動も推進していきたいですね。

ブランズタワー大船で行われた美化活動の様子。マンションの住民、商業施設のオーナーや店舗スタッフ、プロパティマネジメント会社社員などが一堂に集まり、公道やバスターミナルなど広範囲のゴミ拾いを行った。



宇杉
新しいマンションへの入居が始まってしばらくすると、既存の街との関係をどう築いていくかが住み心地に直結していきます。マンションへの愛着が、いずれ街への愛着となる。安心して住み続ける、長く住み継いでいく価値観へと、どう昇華していけるか。その観点がまさに弊社が目指す、“持続可能な心地よい暮らし”に直結すると考えています。
「環境先進マンション」が
目指す姿とは
──大船や豊洲の例でも紹介いただいた東急不動産の主力ブランド「BRANZ(ブランズ)」は、環境にも人にもやさしいウェルビーイングな暮らしを実現する「環境先進マンション」を掲げています。
宇杉
具体的なテーマとして、「グリーンを追求するデザイン」「持続可能な未来品質」「人生のパートナーとなるサポート」の3つの価値の実現を目指しています。

たとえば、今後、開発する「BRANZ」においては「ZEH※」の推進を拡大し、2030年度までにはすべての新築分譲マンションにおいてZEHを標準仕様化することを目指しています。

※ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、断熱や省エネルギーなどのエネルギー消費低減と発電によるエネルギー創出を総合して、年間の一次消費エネルギー量の収支をゼロにすることを目指した住宅のこと。

太陽光発電など再生可能エネルギーを活用することで、省エネルギー化を進めるだけでなく、住民の方にも「環境に寄与する住まいに暮らしている」といった誇りを感じていただける状況を作り出していきたい。
また、エリアマネジメントは決してにぎわいを生み出すだけが目的ではなく、環境保全のため、防災のため、といった展開もできます。
緑化という観点でもマンション内はもちろん、周辺地域全体に緑を増やしていく活動は、今後ますます求められていくでしょう。

たとえば、些細なことですが東急グループでは、沿線などの緑を増やしたり、街を清掃したりする活動を長年続けてきました。
地域のみなさんとともに街をきれいにする、そんな地域活動の歴史も引き継ぎながら、グループのDNAを活かして再開発の街づくりや、周囲の方にも波及効果が出るような仕掛けづくりを少しずつ進めていきたいと思っています。
藤村
近年、コロナ禍による意識変容の動きも加わり、コミュニティだけでなくエコロジーも新たなキーワードになり始めていますよね。
たとえば、アメリカでは社会的な課題と自然環境を一緒に考える「エコロジカル・デモクラシー」というキーワードも出てきています。
エンドユーザーの意見を重視しましょうという動きが出てきた90年代の議論とは裏腹に、このところ少し意識が内向きに先鋭化していたのが、震災やコロナ禍を経てまた外に開き出しているように思います。

まだまだ、マンションを求めるユーザーのスペック・利便性重視の傾向はありますが、少しずつ、街との関係、エコロジーにも関心が向かっていくのではないかと思っています。マンションの住民同士も、プライバシー重視といった閉じられた関係ではなく、緩くつながっていった方が暮らしも楽しいよね、幸福度が高いねと変化してきている。
マンションコミュニティのあり方が、マンションの価値そのものにつながってきているのではないでしょうか。
宇杉
「緩くつながって暮らす」は、これからのキーワードですね。
マンションを舞台に、そこには多世代の人々の多様な暮らしがある。
そのなかで、ライフステージにそって子育てや健康、介護の悩みや、地震や台風への備えの心配など、住民の皆様はさまざまな思いを抱えていらっしゃる。
たとえば、そんな入居者の方の悩みに寄り添えないかと考え、導入したサービスのひとつに「産婦人科/小児科オンライン」があります。

今後も、ハードのものづくりだけでなく、住まうことのコンテンツを充実させるサービスや仕組みづくりを積極的に進めていきたいと考えています。
デベロッパーとしても、これまでは利便性に縛られた情報を出しすぎてきたという自戒があります。
近くに日々の暮らしを分かち合える人がいる、というマンションに住む大きな魅力をもっと伝えていかないといけないですね。
従来、重視されてきた駅からのアクセスの良さなどは、自動運転などモビリティの進化によっても大きく転換していく可能性がある。
判断基準が変容していくなかで、改めて住環境や街の魅力が問われる時代がやってくるでしょう。
街全体の暮らし方を考え、魅力づくりを進めていく力が私たちには求められていると、改めて感じています。
大きな社会課題に向き合い、サステナブルな社会をつくることを事業の大きな柱とし、これからも未来志向で新しい住まい、街のあり方を考えていきたいと思います。


pagetoppagetop