グローバルとローカルの視点で読み解く
モーリーさん、TOKYOはどこがオモシロイですか?

インバウンド需要が急増する昨今、普段、私たちが暮らしている東京は、世界からどのように見られているのでしょうか。
テレビやラジオで活躍する国際ジャーナリストであり、東京に長く住んでいる東京人でもあるモーリー・ロバートソンさんに、グローバルとローカルそれぞれの視点から東京の良さを語ってもらいました。

Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)国際ジャーナリスト、ミュージシャン、コメンテーター、DJ。日米双方の教育を受け、1981年に東京大学、ハーバード大学、MIT、スタンフォード大学、UCバークレー、プリンストン大学、エール大学に同時合格。2005年、ポッドキャストのパイオニアとなり、ネットでラジオ番組「i-morley」を配信。現在、NHK総合「所さん大変ですよ!」、日本テレビ「スッキリ」などの番組にレギュラー出演し、各種メディアで活躍中。

自分が自分でいられる時間と場所を探して、
東京を歩き続けてきた

モーリーさんが本格的に東京で暮らし始めたのは、1991年、28歳の時のこと。東池袋や西早稲田、台東区蔵前など、東京のさまざまなエリアに住み、丸28年以上、東京に住んできました。
「ラジオ番組のナビゲーターとしてレギュラー出演が決まり、アメリカから日本に戻りました。東池袋時代は、見るものすべてが面白くて、たくさん刺激を受けました。次の西早稲田は10年くらい住んだかな? お金がなく、時間も余っていたので、とにかくよく歩いた日々でした。歩きながら色々なことを発想していました」
東京の街を歩くのは発見が多かったそうです。
「東京の幹線道路は車専用にできているので、歩くのには向いていません。だけど幹線を避けて一本中に入ると、豊かな世界が垣間見えるんですよ。レトロな喫茶店やお洒落なカフェ、雰囲気の良いレストランを見つけては、訪ねていました」
よく歩いた西早稲田時代。しかし寂しい思いをすることも多かったとか。
「自分が好きになる店って、なぜかマーケットのメインストリームと噛み合わないものが多くて、すぐに消えていったね。東京に来て寂しかったのは、次第に街並みが商業化されていく感じがしたこと。要は、人が集まって楽しむ文化的な価値が、『それはお金にならないから』と、資本の手で追いやられていったんですね。当時はクオリティ・オブ・ライフを追求するスペースが街からどんどん減っていった気がします」
「自分が自分でいられる時間と場所を探して、遊牧民のように歩き回っていたのかもしれない」とモーリーさんは言います。そんな状況が変わったのは、台東区蔵前に引っ越してから。
「21世紀に入って、日本の社会構成が変わりましたね。終身雇用が崩れ、派遣社員が増えました。そしてグローバリズムが入って競争が厳しくなり、安定を求めて消極的に人の真似をしても幸せになれない状況が生まれました。そして若い人が離脱して、自分の好きなように生きるケースが増えていった。僕はこの状況を面白いと思いました。文化的でクリエイティブなスペースへのニーズが強まっていったように感じたんです。そして蔵前に引っ越すと、実際、街にゲストハウスができて外国人や観光客が集まっていたり、倉庫街が再開発されて家具屋さんやチョコレート工場になったりと、楽しかったですね。パーティー気分がありました」
外国人観光客が増え、インバウンド需要が増えるとともに、「東京が面白くなっていった」と感じたそう。
「外国人たちによって、日本人が目を向けていない東京の良さが再発見され、東京のブランド価値が再構築されています。新宿ゴールデン街なんか今や、インバウンドだらけですよ」
ビジネス的な観点から見ると、東京は世界からどう見られているのでしょうか。
「ビジネスとして見ると、東京はコンパクトで凝縮されていて、アクセス、インフラがすごくいいですね。『停電しない』とか、『水道の水が飲める』とか、そんな当たり前が世界から見るとすごいことなんです。あと、公共交通も相当すごいですね。この快適さはロンドンやニューヨークなどほかの大都市にはない利点でしょう」

芝浦が新しい玄関口として
東京の起点になることを期待します

東京都は、国際戦略総合特区「アジアヘッドクォーター特区」を設け、海外企業の拠点をより一層東京に集積しようとしています。今後、東京自身がプレゼンスを高めていくためには?
「世界から来たクリエイティブな外国人に活躍の場を与えること。そして彼らのエネルギーと、東京の地域に根付いたエネルギーがリンクする……漠然と言うと、そんな感じだと思います。日本は集団主義で、効率の良さやクオリティ、協調性については抜群。世界でも有数です。ただその分、日本は個人主義を後回しにしてきました。そこの融合が今こそ問われているんじゃないかな。でもそれで都合のいい外国人がやってきて、高いパフォーマンスのファンドみたいに、『日本でリターンを出して、期限が来たら去っていく』みたいな方向性だったら絶対に失敗すると思うんですね。もっと有機的に、彼らが持ってくる多様性や価値観を東京が吸収し、新たな価値を生み出し、それが世界に向けて発信されていくのが理想です」
そしてその鍵になる場所のひとつが、これからの東京の玄関口となる芝浦エリアです。近年は再開発が進み、港区の公的施設「みなとパーク芝浦」や商業施設「ムスブ田町」などの大型施設が開業。また田町にはさまざまな大企業の本社があり、東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター、芝浦工業大学などの教育施設も豊富です。これらの結果、芝浦港南地区は現在、人口が急増中で、1980年ごろは1万3000人ほどでしたが、現在は5万6000人を超え、430%の伸び率を見せています。(*出典:港区企画経営部区長室発行「やすらぎある世界都心・MINATO」(2019)ここからはじまる物語より)
「芝浦はこれからの日本の玄関口であり、ウォーターフロントであり、学生街でもある、将来が楽しみな街ですね。街が育ち、潤うためには、資本と優秀な人材と教育・学術研究がベースにありながらも、そこに多様性のある文化が入って上手く循環し、互いに相互作用する空間になることが大切だと思います。そしてそれらの要素が、運河を中心とする“水”によって引き寄せられていく。芝浦がそんな街に育ってくれると嬉しいですね。この玄関口を起点にさまざまなエネルギーがリンクし、新しいビジネスや文化が生まれることを期待します」

アジアヘッドクォーター範囲 アジアヘッドクォーター特区エリア概念図

東京都が推進する外国企業誘致プロジェクト「アジアヘッドクォーター特区」。中でも品川・田町エリアは、国際線の増便が計画されている羽田空港や、2020年春に暫定開業が予定されている山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」駅に近く、2027年には品川−名古屋間でリニア中央新幹線が開業するなど、新たな日本の玄関口として国内外から注目を集めています。

外観完成予想CG