3世代で劇場に来るお客さんもいて、
世代を超えて愛されている街だと思います。

大衆演芸は、芝居や舞踊などをメインに公演する劇場で、女方ブームなどもあって人気に拍車がかかりました。1940年代には大衆演劇の劇場は50施設ぐらいありましたが、高度成長期で娯楽がテレビに移り変わって、大衆演芸場も少なくなりました。23区では「浅草木馬館大衆劇場」と、「篠原演芸場」の2件のみになりましたが、本劇場は都内最古の歴史を誇ります。時代が進化するにつれ、私たち劇場の演出も変化させてきました。少し前までは、テレビをつければ時代劇などが放送され、時代物に触れる機会はありましたが、最近はないということもあって、若い人たちは「旅人」や「芸者」などもピンとこないんです。そこで、よりわかりやすく、若者ウケがよくなるように、髪型もパーマやカラーなどを入れて今どきの演出にアレンジしたりします。十条は、学生が多い街ですが、実は学生もリピーターが多いんです。世代を超えて楽しめる街だから、3世代家族で劇場に来るお客さんもいたりします。たとえば、「瞼の母」という定番演目があるのですが、子どもの時見た時と、大人になって見た時でまた見え方、感じ方が違う。そういう発見があるのも演劇の魅力ですね。昔からそうだったのかもしれませんが劇場の役者は、元祖会えるアイドルとも言えますね。役者を子ども時代から知っていて、孫のように応援してくれるシニアの方もいます。また、観覧を楽しむと同時に、友人との交流の場にもなりますし、高齢の方にとっては活力の秘訣、生きがいのように思ってくださるのもありがたいですね。

横のつながりが深い街だから、
劇場と地元が一体になった無料イベントも。

十条は、池袋だけでなく、新宿、渋谷への直通でアクセスできて、物価も安く、商店街も賑やかで発展しています。少し足を延ばせば、サッカースタジアム「味の素フィールド 西が丘」や、様々な競技のトレーニング施設がある「味の素ナショナルトレーニングセンター」があって、スポーツや文化の拠点としての一面もありますね。十条はまた、昔ながらの街なので、横のつながりが深いんです。当劇場でも、地域や町内会、商店街組合、消防署や警察などによる貸切無料イベントが催されたりと、地元の人たちの交流の場としても利用いただいています。ちなみに、消防署の主催では演劇で火消しの演目をして、その後に消防隊員の方が防災などの講演をやることで、地域の啓蒙活動にも貢献しています。

Shinohara
Entertainment Hall

有限会社 篠原演劇企画
専務取締役
篠原 正浩さん

23区で2劇場を運営、その他健康ランドなどでも精力的に公演をおこなっている。生まれ育ちも十条の3代目で、地元のこの街をこよなく愛している。