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QUALISM 究極を味わう

Vol.4 文字の持つ表情をより豊かに。

History 日本の文字に最適な万年筆を目指して

垂直に近いほど立てて書く毛筆に対し、45°よりもゆるやかに寝かせ、力を入れずにスーッとペン先を走らせる万年筆。両者の違いは、その筆記具がどんな言葉を書くために生まれたかという由来によるところも大きい。日本語や漢字など縦書きに使う毛筆に対し、万年筆は横書き文化のヨーロッパで生まれた。「万年筆を日本に根付かせたい。そんな想いで創業者・並木良輔が金ペンの製作に成功し、万年筆の製造販売を行う“株式会社並木製作所” を設立したのが、大正7(1918)年。ここから私たちパイロットの万年筆、そして筆記具に対するこだわりの旅が始まったのです。」
そう語ってくださったのは、株式会社パイロットコーポレーション営業企画部 高筆企画グループ課長の武井紀美江さん。
「当時の大きな目標は、万年筆のすべてを日本の中でつくろうということでした。“すべて” というのは、パーツのひとつひとつすべて、という意味です。以来96 年間、ペンポイントなどすべての部品を国内でつくり続けており、それはそのまま我々パイロットのポリシーとなっています。」
日本製にこだわる…と言葉にするのは容易いが、それをカタチにするのは困難の連続だった。中でも難しかったのが、ペン先である。

武井 紀美江さん

「万年筆のペン先は金です。そして金というのは、柔らかい。実際には14 金を使用しているのですが、それだけでは柔らかすぎて、長く使うことができません。そこに硬い金属を付帯させることで耐久性を向上させます。その硬い物質をつくるのが難しかったのです。そして金属ができた後は、それを加工しなければなりません。万年筆のペン先はカットされていて、そこをインクが通過することで文字が書けるわけです。つまりペン先が硬いほどにカットすることは難しくなり、高度な技術が必要となってきます。」ペン先の硬さは、そのまま書き味につながる。柔らかければ滑らかなタッチを実現するが、柔らかすぎると摩耗が激しくなり、長く使い続けることができない。そのバランスをどこで取るか…そこにパイロットが試行錯誤を繰り返しながら積み重ねてきたノウハウが生きてくるのだ。

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Market 高い品質に“日本らしさ” を加えたデザインに世界が注目。

Made in Japan の万年筆は、世界で通用するのか? パイロットは大正15(1926)年にロンドン、ニューヨーク、上海、シンガポールに支店・出張所を開設。第二次大戦を挟み、昭和20 年代後半にはブラジル、昭和40 年代中頃からアメリカ、そしてヨーロッパに現地法人を設立し、本格的な世界展開を目指していく。「いかにオリジナリティを出していくか。こだわったのは、“日本らしさ” ということでした。そこで最初に目を付けたのが、漆です。というのも、当時はボディの素材が現代ほど優れたものではありませんでした。耐久性が低いのです。これに対して、日本の伝統工芸品などには材質保護とデザインの両面で貢献する、漆が使われています。これにヒントを得た万年筆をつくり、海外に展開しました。そして次の段階として施したのが、ボディに蒔絵をまとわせること。こうした海外展開をしていく中で私たちがこだわったのは、品質はそのままに、いかに“日本らしさ” を表現するかということでした。そしてはじめてこれを認めてくれたのが、イギリスを代表する高級ファッションブランド、ダンヒルだったのです。」昭和5(1930)年にダンヒルと販売代理契約を結んだパイロット。その関係はもちろん、いまも継続している。パイロットの海外ブランド「Namiki」とのダブルネーム「Dunhill-Namiki」は、蒔絵を施した高級万年筆として高い人気を博している。

海外で評価される「ナミキ・ファルコン」

全世界に向けて製品を展開するパイロット。ボールペンやフリクションペンなどが主流の中にあって、日本語のために生まれた万年筆「ELABO」も人気だ。「筆記体で書く横書きにも、ペン先の抑揚があったほうがスムーズに書けるということでした。ペン先の形状がファルコン(ハヤブサ)のくちばしに似ているということから、“ナミキ・ファルコン” という名称にしました。」