今ふたたび呼び起される歴史の鼓動。そこは変貌する都心のほど近くにありながら、日本の原風景を今に残す大田区「久が原」。 長きに亘り人々に愛されてきた緑とともに、歴史と伝統を継承してきた地。 時が育んだその尊い自然の恵みと記憶を次代に継ぐために。この地に暮らした人々の営みと郷土への想いを継ぐために。 私たちが未来に描き出すのは、緑とともに現代の暮らしを謳歌する歓びに満ちた「住」の理想であるように。 大田区「久が原」を舞台に今、新たな歴史が開かれる。ようこそ、私たちが紡ぎたい未来へ。

MEMORIES OF THE LAND


建築家だった父の邸を受け継いで、もうかれこれ30年以上になるでしょうか。現在では音楽セミナーや演奏会を開催していて、ご近所の方も多く来られます。大学の先生だったり、主婦の方も多くて、地域のコミュニティーの場のようになっています。

私が子供の頃、我が家には父の友人の建築家や彫刻家が多く家に集まり、私なんかはよく可愛がられていました。映画俳優もこの久が原界隈に多く住まわれていましたね。今では新しくて便利なお店も増えてきましたが、困った時はいつでも相談にのってくれるような、顔馴染みの店もまだまだあります。

旧六郷用水(約1,120m・平成25年11月撮影)

昔、近くには竹林や原っぱなどがあったのですが、今もまだ昔の面影を残しているところもあります。たとえば、江戸時代につくられたという旧六郷用水もそのひとつといえるでしょう。かつてから街の人々に親しまれてきた緑と水の風情を、現在でも感じることができます。

自宅の庭にあるコブシの木は、今ではこんなに大きく育ちましたが、毎年3月になると白い花を咲かせるんです。それが夕日を浴びて本当に美しい…。また一年が過ぎてこの季節が巡ってきたんだなぁと、長い歳月の流れに感慨深いものがあります。変わりながら変わらないんです、ここは。そう、私は思うんです。

ライラック通り久が原(約330m・平成27年4月撮影)

HEART OF HARMONY


もともとあった緑を継承しながら、本計画では「開かれた緑」をイメージし、新たな住まいの全体像を描きたいと思いました。そこで植栽計画では、敷地にあった樹種をメインにしながら、ケヤキやモミジなど既存樹との相性の良い樹種を選定しています。

敷地付近には、江戸時代から農業用に使用されてきた旧六郷用水があります。それはこの街の憩いと癒しの風景でもあり、私たちはその風情を受け継ぐために、縦長の形状にした緑あふれる提供公園を配しました。

旧六郷用水(約1,120m・平成27年4月撮影)

またケヤキの大径木がある敷地北側のオークプロムナードは、西と東を緑を感じながら往来できる、地域にも親しんでいたける散策路になります。建物と緑の調和も意識したことのひとつです。 外観を印象づける妻側部分には、職人の手で一枚一枚土から焼き上げたせっ器質のハンドメイドタイルを外壁素材として使用しています。
手作りならではの焼きムラが表現されていて、敷地の緑との親和性が高く、風格ある建物の外観と相まって落ち着きと品のある佇まいを感じさせます。

緑それぞれに意味と価値があり、その歓びを住まう方とこの街で共有していく。そんな住まいづくりの理想を感じていただけたらと思います。

増明院
(約220m・平成27年4月撮影)

鵜の木松山公園
(約110m・平成27年4月撮影)

THOUGHT OF RELAX


今回の大きな特徴は、約8400㎡という敷地のスケール感です。その恵まれた広さを活かすためにまず意識したのが、広がりのある眺望を楽しんでいただきたいということ。周辺が住宅街であるということもその理由です。東西と南の各棟をコの字型に配置し、それぞれから空が大きく開けた広がりのある眺望を楽しむことができます。また眺めの良さだけではなく、光を通す和紙模様のガラス手摺や風を通す横桟手摺を配して、光と風を五感で感じられる設えを考慮しました。

江戸東京たてもの園(平成27年8月撮影)

そんな自然を感じられる住空間の中には、もうひとつの仕掛けがあります。それが建物各所に設えたおもてなしの空間。伝統家屋の長屋門から発想したエントランスの大庇や品格と広がりのあるエントランスホール、また書院の間の落ち着きを思わせるラウンジやゲストルーム。訪れたお客様は、そこが我が家のリビングのような落ち着きを感じていただけるはずです。

空間のゆとり、時間のゆとり、そして文化のゆとり。それが一体となって醸し出す心の贅沢を、現代の住まいに表現できたのではないかと思います。

江戸東京たてもの園(平成27年8月撮影)

江戸東京たてもの園(平成27年8月撮影)

PEACE OF MIND


武蔵野台地は10万年ほど前から形成された、関東ローム層による堅固な土地でした。その中の高台にあたる久が原一帯は、南に東京湾があり、西に多摩川が流れている、漁撈や稲作に適した生活しやすい土地だったため古代の人々にとって穏やかに暮らせる地として選ばれてきました。

弥生時代には、一説によると千軒近い住居跡があったと言われていて、非常に大規模な村が久が原に作られていました。一般的に、水に脅かされやすい低地や急峻な地は生活の痕跡が少ないと言われています。久が原は、土地自体が高台でかつ平坦であったため、大きな村を作りやすかった。しかも東京湾で魚を獲り、多摩川流域では米作りが行われ、そういった作業がしやすい大変豊かな土地だったと言えるでしょう。

現地周辺空撮(平成27年3月撮影)
※掲載の空撮は一部CG加工を施しています。予めご了承ください。

このように古くから住まわれてきた久が原の地ですが、その後江戸時代には、江戸近郊の地として機能しながら、一方で変わらず風光明媚な多摩川と豊かな農村地帯としての伝統もある。久が原は、そうした歴史が現代へとつながっている、由緒ある土地と言えるのではないでしょうか。

鵜の木一丁目横穴墓群(約110m・平成27年9月撮影)

SPIRIT OF THE SHARE


かつてみんなが農耕をし、一年に一回の収穫を相互扶助の形で力をあわせて行っていた時代がありました。そんな歴史を思いながら、多くの方が集まって住むマンションだからこそできることを考え、より快適な住環境をご提供したいというのがサービスメニュー検討のスタートでした。当社は、当社の分譲引渡後のマンションに住み心地のアンケートを行うのですが、そのアンケートでいつも多様な要望をいただくのが「収納」についてです。
そのアンケートでは、引っ越し当初は物を整理して収納できていたはずが、月日が経つと知らず知らずのうちに徐々に物が増え収納しきれないというお話、来客用の布団やスーツケース、バーベキューセットのような利用頻度が低いものがかさばって困るというお話など、様々な収納に関する悩みを伺います。

今回、本計画ではそんな窮屈さを解消するために、全邸に押入れサイズのマルチストレージをご用意しました。
また収納は専有部の内容ですが、今回は共用のソフトサービスとして、マンション入居者の皆様で共有できるアイテムをご用意いたしました。台車や脚立、バーベキューセットやお客様用の布団。日頃使わない物やある一定の時期しか使わないような物をみんなで共有することにより、お部屋はよりすっきりと快適に過ごしていただけると思います。実はこういったシェアというのは、一人ではなかなか始められないもので、私たちがまずご提案することで議論が生まれ、より最適化していくものではないかと考えています。かつてはそういう分かちあいによって育まれてきた暮らしがあったんだと思います。その素晴らしい精神を今だからこそ、大切にしていきたいと考えています。

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